人を育てる|ハワイ|TH Associates
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           人を育てる

トップが具体策を詳細にチェックし納得できないと、意思決定できず、アクションを起こせないという組織では、意思決定とアクションが遅れることはもちろん、場合によっては、トップの多忙さの陰で忘れ去られるということも起こる。トップに対して、検討の督促はしにくいものであるので、せっかく時間と工数をかけて 作成した具体案も日の目を見ず、ムダになるということにもなりかねない。

 

また、物事には、タイミングがあり、現場のモチベーションが上がっている時期にタイムリーに意思決定が されると実行もスムーズに行くものである。反対に、忘れたようなタイミングで意思決定がされても、モチベーションを上げるためのセットアップの工数がいるので、ムダが生じるということにもなる。

 

それに加え、人が育たないのが問題である。トップが細かくチェックするということになると、自分が責任を持って提案し、それを実行し、良きにつけ悪しきにつけ結果について責任を持つということにはならず、学びの機会にならないのではないかと思う。結局、トップも現場レベルの具体策についても直接責任がある形に なるので、現場の責任の度合いが結果的に希薄化し、痛い目にあって身体で学ぶというプロセスにはならない。また、トップが細かくチェックするということは、信頼されていないことの裏返しでもあるので、現場のモチベーションも上がらない。組織全体としても、特に若い世代の新鮮なアイデアを、多少失敗したり、障害があったとしてもそれを乗り越え、諦めずに実行していくという文化にはならない。責任体制は、組織のハイアラキーでそれぞれのレイヤーでとるのは当然であるが、意識の上では、具体案を提案した現場が責任を感じるものであるので、そこを信頼して任せて、組織的な責任は上位の者がとるというのが、組織と人との関係であると思う。

 

数十年前、米国の合弁会社の米国側親会社のVice President(VP)が部下を一人つれて、打ち合わせに来た。会議の合間の雑談で、そのVPは、「彼(=部下)がここ(五階)から飛びおりろと言えば、私はそうするんだ。」と言っていた。つまり、その部下の提案には全幅の信頼を置いているということである。VPは、心底そう思っていたのかもしれないが、部下のモチベーションを上げるために、本人の前でそう言ったのかもしれない。いずれにせよ、効果的なコメントだなぁと思った次第である。その部下は、おそらく、そのVPのためにもっと良い仕事をしようと思ったに違いない。これは個人対個人の関係ではあるが、結果として、組織に とってもモチベーションの上がったスタッフが増えることはプラスであり、好循環が生まれることになる。

 

日本人は、一般にほめるのが下手で、マイナスの点を指摘することで、自分の立場の正当性を示すというような人が残念ながら多い。組織は、上下のハイアラキーではなく、役割の違いを表わしたものと考え、ポジティブな循環を起こせば、組織の発展に寄与することになるものと思う。

 

こうした文化は、一朝一夕には変えられない。トップが意識して、繰り返し言葉とアクションで示して初めて、徐々に変わっていくものである。現場からの文化の変革は、非常に難しい。したがい、トップが意識しなければ、ほぼ永遠に変わっていかないものと思う。そして、トップも人であるので、自分自身のやり方を自ら変えるというのは、自発的にはなかなか起こらず、よほど組織の存立の危機にでもならない限り、変える必要性を感じないのではないかと思う。トップが、人の意見を聞き、それをヒントに自分を成長させたいという 意識のある人であれば、つまり松下幸之助氏のいう「素直な」人であれば、自分も変わり、組織の文化もより風通しの良いものになっていくものと思う。